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2009-08-17

天路歴程(33)神の人

ある山道で、粗末な衣服を身にまとい、神様のみ言葉を伝えて歩く1人の老人に、若い求道者が旅先で道連れになりました。

行く先々で、老人は 寂しい家を見付けては、誰に頼まれた訳でも無いのに、寂しい人の話を聞いたり、慰め励ましたり、その人のためになることを心を込めてやりました。

老人は寂しい人が、安心したのを見届けると静かに手を合わせてから、姿を消すのでした。

若者の求道者は、その有様を、不思議な気持ちで眺めていました。

「自分よりみすぼらしく、杖1本のこの老いた御方は何者だろか?」

2人とも旅で、ホコリだらけでしたから、まるで乞食のような姿に見えました。。

ある村の入口にさしかかった時の事でした。

村人の1人が大声を上げて叫びました!

「お前たち、村に入るな!物乞いはもうたくさんだ!さっさと失せろ!」

その言葉を聞くと老人は静かに、何時もの仕草で、手を胸の前に合わせ合掌してから立ち去りました。

暫らく歩き、若者が先ほどの村を振り返って見ると、村全体が黒い雲に覆われて闇の中に沈んでいました。

「あっ!」若者の声で振り向いた老人は、大地に直ちに跪いて祈り始めました。

「あの村人たちに、罰を与えないでください。彼等は愛を知りません。無知の闇に閉ざされています。

神よ愛にまします大いなる主よ!彼等の無知を罰しないでください!

どうか、寂しい村人たちに呪いではなく、愛の目覚めを代わりにお与えください!」…

老人の祈りは真剣そのものでした。

若者の求道者は目を瞠(みは)りました。

小柄で痩せこけて、あまり風采の良くない外見から、想像も付かない神のような目を持った御方がおられる。

彼は不思議な夢を見ているのだと、錯覚しました。

目をこすり、瞼を閉じてまた開くと、老人が静かに語りはじめました。

「若者の求道者君、神はゆえなく人を罰しないで、許しの時をお与えくださる。

今が正にその時なのです。

わたしの使命は執り成しの祈りを托され村人を目覚めに導くことです!

もう、わたしの使命は果たしました。

「若者の求道者君、此処でお別れです!君が見たままが神とわたしの真実そのもの、神は愛です。

君は信じますか?神と人との深い関わりを?」

彼は答えました。

「主よあなたの御心を信じます!」

若者の求道者が目を開いた時、老人の姿は消えていました。

若者の求道者は、再びあの村に目を向けました。

あの村を覆っていた闇は消え失せて、明るく輝いていました!

優しい風に包まれて、若者の求道者は村に別れを告げて、北に向かい歩き始めました。

あの不思議な老人の温もりを肌に感じながら!



2009-07-16

天路歴程(17)天に帰った獣医

極楽死を望む

四国の何処かのお寺に、極楽往生をお願いに行くツアーがあると聞きました。

歳を取ったら誰にも迷惑を掛けず、“ポックリ”あの世に行きたいと、誰もが密かに抱いている、世俗的な願望だと思います。

特に心身を痛めると、自分の往生際が気になるものです。

念仏を唱えてポックリあの世の旅に出掛けられたら!苦しまずに最高の人生をむかえられるでしょうか?

このお寺の住職に一度会いゆっくり話を聞きたいものです。

情けが仇に!

ある生活者がいました。

元、腕の立つ獣医師でしたが、ある時、北国の酪農家の家畜の健康状態を調べるために派遣されました。

偶然立ち寄った農家の一頭の牛に、蹄(ひずめ)の病気が見つかりました。

彼の役目は辛いものでした。

放置すると、健康な牛にも伝染します。

彼は規則に従い、役所に報告しました。

当然、薬殺の指示が出ました。

彼は情け深い人物でしたから、ためらいました。

家畜を育てる苦労と、飼い主の愛情を思い、薬殺に踏み切れないで悩みました。

「今すぐに薬殺する必要はなかろう?少し様子を見てからでも遅くはあるまいと自問自答しました」

さらに、農家のおばーさんが両手を合わせて必死に牛の命ごいをしました

泣きながらです!

彼は、おばーさんに、こう言いました。

「今日は一先ず引き揚げますが、何か異変が起きたら、直ぐ私に知らせてください」と。

それから1週間も経たないうちに、緊急の知らせが役所から届きました。

牛の蹄の病気が村全体に蔓延し、全て病気に侵された牛を薬殺処分せよ!との、厳しい、最悪の指示でした。

当然、彼の責任が厳しく問われました。

彼は、あの時見逃した牛のこと、涙を流しながら手を合わせた、おばーさんのことが、重苦しく、心にのしかかって来ました。

村に着くと、不安顔の酪農家の人々が集まっていました。

検診の結果は悲惨なものでした。

その日のうちにかなりの牛の命が、彼の手でを断たれのです。

やがて、真相が明らかになりました。

彼は重い責任を負わされ、石を投げられ、獣医師の資格を剥奪されました。

後はお決まりの転落の道が彼を待ち受けていたのです。



初めて、彼に会ったのは身寄りのない人々の施設でした。

仏教系の施設でしたが、私は自由に立ち入りが認められていました。

6人部屋の窓際のベッドに背中を丸めている姿に強く気が惹かれました。

似つかわしくないのです。

毎日、酒に明け暮れ、無断で女性の部屋に入り込み、だれかれなしに抱きついて回る。

彼の居場所は、そこにはありませんでした。

そんなある日、公衆電話が教会にかかって来ました。横浜市寿町の、通称ドヤ街からでした。

施設も追い出された彼は、必死にすがりついて来ました。

彼を苦しめる原因が、判明しました。

あの時、自分の手で薬殺した牛たちが彼の前で涙を流したというのです

賢い牛たちは、自分が殺されることを直感的に知り、涙をながして命乞いをした。しかし僕の手で彼らを殺した。

その良心の呵責が自分を含めて人間不信に輪をかけていたのです。

酒に酔えば、「牛が泣いてる」と、頭をかきむしり、悲痛な叫び声をあげました。

彼をドヤ街から救い出し、町田市のアパートに住まわせました。

だんだん彼は心の内を打ち明けてくれるようになりました。

それからほどなく洗礼を受けて、彼の心にやっと平安が訪れたのでした。

彼は自宅のアパート暮らしを自由気ままに楽しみ、私とほぼ同じ年齢で静かにこの世を去りました。

今はわたしたちの教会の共同墓地、見晴らしのよい、静岡県御殿場市にある富士霊園に静かに眠っています。

優しい獣医師さんは天国の牧場で仲良しの牛たちと楽しく暮らしていると思います。

彼が望んだポックリ寺は、彼の身近に、優しい心の中に在りました。

天路歴程を、彼なりの仕方で過ちを償い、歩んでいきました。

安易に責任のがれを避けることをせず、自分過ちに誠実に向き合い、苦しみながら、かれなりの償いを果たして、天国に国籍を移した彼に、神の御祝福を改めて祈ります!

アーメン、ハレルヤ†
木々の緑のなかで!

2009-06-13

阿蘇・地獄谷での祈り(2)

今も昔も貧乏暮らしは変わりませんが、あの時は阿蘇山に行くガソリン代がなくて、神様、ガソリン代を工面して下さいと、祈りました。

祈り求めていた数日後思いがけないお方から、伝道活動費にと献金をいただきました。

片道分でしたが、喜び勇んでぽんこつ車に乗り、一路、阿蘇山を目指してひたすら走りました。

車で仮眠をとり、あんパン一個に牛乳一本が一日分の食事です。

苦労しながらやっとたどり着き、地面に膝まずき祈りました。

地熱で足が焦げそうです。

しかしなんの応答もなく一夜が明けました。

はるばる祈りに来た私の“聖地”はただ白い湯煙にかすんでいました。

しばらく経った時、光が差し込んできました。

祈りの手を休めて、山の斜面を何気なく見た時です。

かすみの中に人影らしい姿を見ました。

空中に浮き上がって私を見下ろしています。

合掌している姿でした。

不思議な瞬間でした。

消えたあとに湯煙の音も消え、静寂に包まれていたのです。

はるばる来て良かった!涙がとまらないのです。


地獄谷に別れを告げて下山しました。

帰路、琵琶湖に行けと言われて、行き先が分からぬまま車を走らせました。

ある一軒の農家を訪ねました。

牛たちが、見知らぬ訪問者を迎えてくれました。

やがて主がUさんと言うお方があらわれ、通された部屋の仏壇に手を合わせた時、扉を開いてくれました。

中には位牌の隣に†字架が見えます。

彼が灯りをともしました。

それはクリスマスのイルミネーションでした。

ずいぶん変わったお仏壇ですね?と尋ねますと、彼は「わたしは隠れキリシタン見たいなものです」と淡々と話してくれました。

いとまごいをする時、真顔になり、「あなたが訪れることがわかってお待ちしていました」と話してくれました。

さらに「帰りのガソリンを満タンにしましょう」と言われ、予備タンクからガソリンを入れて下さったのです。

聖霊に導かれる不思議な体験の旅でした。