【医者と薬】
医者をその仕事のゆえに敬え。
主が医者を造られたのだから。
いやしの業はいと高き方から授かり、
それによって、王からは褒美を受ける。
医者はその博識によって高い身分を与えられ、
権勢ある人々の前で驚嘆される。
主は大地から薬を造られた。
分別ある人は薬を軽んじたりはしない。
一本の木によって水が甘くなり、
木に備わる力が、明らかにされたではないか。
主は自ら人々にいやしの知識を授け、
その驚嘆すべき業のゆえにあがめられる。
医者は薬によって人をいやし、痛みを取り除く。
薬屋は薬を調合する。
主の業は決して終わることなく、
健康は主から全地の人々に与えられる。
子よ、病気になったら放置せず、
主に祈れ。そうすれば、主は治してくださる。
過ちを犯すな。手を汚すな。
あらゆる罪から心を清めよ。
良い香りの献げ物と、
質の良い小麦粉を供え物として献げよ。
余裕のあるかぎり十分に、供え物に油を注げ。
その上で、医者にも助けを求めよ。
主が医者を造られたのだから。
彼を去らせるな。お前には彼が必要なのだ。
医者の手によって病気が治る時もある。
医者もまた主に祈り求めているのだ。
病人の苦しみを和らげ、
命を永らえさせる治療に成功することを。
創造者に対して罪を犯す者は、
病気になって医者にかかるがよい。
【死者への哀悼】
子よ、死者のために涙を流せ。
お前は大きな苦痛を味わっているのだ。
悲しみの歌をうたえ。彼にふさわしい礼を尽くし、なきがらを包め。
また、埋葬をおろそかにするな。
悲痛の涙を流し、胸を打って嘆き悲しめ。
彼の名にふさわしく喪に服せ。
人からとやかく言われぬように一両日喪に服し、
その後、心痛がいやされるため弔問を受けよ。
なぜなら、悲しみから死が生じ、
心の悲しみが力を奪うから。
苦悩に身を置くかぎり、悲しみは付きまとい、
貧しい者の生活は、呪いに満ちたものとなる。
悲しみに心を奪われてはならない。
人生の終わりであったとあきらめ、
悲しみを払いのけよ。
忘れてはいけない。その人は戻らないのだ。
嘆いても彼のためにはならず、
自分の体を損なうだけだ。彼の運命であったと考えよ、
お前も同じ定めにあるのだから。
「昨日はわたし、今日はお前の番だ。」
死者を墓に休ませたなら、もう彼を思い出すな。
彼の霊が去ったなら、気を楽にせよ。
【職人と学者】
学者の知恵は、余暇があって初めて得られる。
実務に煩わされない人は、知恵ある者となる。
どうして知恵ある者となれようか、
鋤を握り、突き棒の扱いを自慢する者が。
また、牛を追い立て、仕事に忙しく、
話題は子牛のことばかりという者が。
彼は畝作りに没頭し、
夜も寝ないで若い雌牛にえさを与えている。
職人や職人頭も同じだ。
彼らは昼夜を分かたず仕事に励む。
印章を彫り込む人々、
さまざまな下絵書きに没頭する者も同じだ。
彼は本物そっくりに表現しようと精魂を傾け、
夜も寝ないで仕事を仕上げる。
鉄床のそばに座るかじ屋も同じだ。
彼は鉄の細工物を一心に見つめる。
熱風で体はやけどを負うが、
炉の熱にあてられながら、懸命に仕事をする。
彼の耳には、金づちのやかましい音が鳴り響き、
目は器の形に注がれる。
彼は仕事を完成させようと精魂を込め、
夜も寝ないで見事に仕上げる。
仕事場に腰を据える陶器職人も同じだ。
彼は足でろくろを回す。
常に仕事に熱中し、
その作品を数える。
彼は足で粘土をこねて、固さを除き、
手でそれを形づくる。
上塗りをかけて仕上げるのに精魂を込め、
夜も寝ないで、窯を掃除する。
これらの人々は皆自分の腕に頼り、
それぞれ、自分の仕事には熟練している。
彼らなしに、町は成り立たず、
住み着く人も、行き来する人もいない。
しかし、彼らは民の会議では意見を求められず、
集会においても責任ある地位には昇れない。
裁判官の座にもつけず、
法律にかかわる決まりも理解していない。
教訓や法律を説き明かすこともできず、
格言にも精通していない。
彼らは造られたこの世界の調和を固く保つ。
彼らの願いは、仕事を全うすることにある。
しかしながら、心を傾けて、
いと高き方の律法を研究する人がいる。
(シラ書38章 1〜34節)
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