−旅人(終章)−
函館を去る時、青函連絡船の最後部のデッキから、小さく小さく消えていく島影をいつまでも眺めていた。
「父の眠る北の大地よ。すべての思いを優しく受けとめてくれた北の大地よ。我が生あらば、今一度、この大地を踏みしめたい」
津軽海峡の波しぶきが、様々な思いを受け止め慰めてくれるように思えた。〓〓
アイとアイン号と私たちの北海道の旅はこのようにして、静かな終わりを告げた。いろいろな事が走馬灯のように浮かんでは消えていった。
あのトラピスト修道院の老修道士。北キツネの子ギツネ君。秩父別のルデアさん。アイを助けて下さった、稚内の命の恩人、高田先生。宗谷岬の荘厳な夕日。網走刑務所で祈ったKJ君の事。摩周湖で出会った全生園の青年。
35年前、根室でお世話になった、高木正一、恒子ご夫妻。根室スバル、清水モータースの温かいご一家との心の触れ合いなど。
旭川の赤川さん。父の会社の親切なあのドライバーのことなど……。皆まるで夢のようであった。
これからも旅はなお続く。これはおわりではない。ほんの旅の始まりにすぎないのだ。
助け(クリオン島のことを含めて)必要としている人がいる限り、私は地の果てまでもこの福音を携えて、この喜びを伝えるために旅をしたい。「旅人」という名の伝道者。これが、私の神に示された道である。 合掌
「心の旅路」より
次回、(あと書きを掲載)し終わります。拙文に、お付き合いいただき有り難うございました。感謝の内に†
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