生命ふたたび(6)
─ある頸椎症患者の記録─
−遺書−
博多にいる"弟"田中道孝君から聞いたこともあったし、色々考えて私は遺書をしたためた。今にして思えば「滑稽」なことであるが、3月1日以前は、手術そのものが捨て身の覚悟でなければ、私自身が納得しなかった。
遺書は、「愛の樹」グループ愛の会(教会)、NGOフィリピン・クリオン島を助ける愛の会、愛の樹ふるさとの家 日田、それぞれに関して、弟子、親しい友人、家族に対して宛てられた。
そのほかに、クリオン島のアガペ教育プログラムの教育費受給生1600人の子供たちとその家族宛て、彼らの世話をしているクリオン愛の会のリーダーである、弟子でクリオン市議のフランシスコ・エスピナ兄、また、マニラにいる息子と私が呼んでいる、エリエゼール・M・パスクア主教(フィリピン・キリスト合同教会南ルソン管区主教)などに宛てたものである。
私が「死んだら」いかにしてこの会を維持するか、細かいことを、運営方法、維持などについても触れた。そのためにも、「愛の樹」のマグナカルタ、仲間の兄弟姉妹の和合、ルールの厳守などを書き記した。その遺書を弟子に託し、万が一の時公表するように伝えた。それほど、私は追いつめられていたのである。
自分一人ではとても生きられない。何一つするにも、仲間の協力がなければ何も動かないということを、改めて思い知った。人間は、一人では生きられない動物だ。
−生きた一言−
少し話しは変わるが、ICUのベッドの上に横たわっている時、看護副部長さんがポツンと言われた。
「私に信仰心は無いけれど、奇跡は信じます。癒されていく奇跡を、たくさん見てきましたから」。
感動的な、生きた言葉であった。彼女は付け加えた、「自分の中にある、生きる力を信じてください」と。
翌朝自室に戻る時、心にしっかり刻みこんだこの言葉に対して、感謝の言葉を私は伝えた。すると彼女は、「いいえ、私こそ、患者さんたちから多くのことを学んでいるのですよ」と言葉を返された。
(つづく)
「生命ふたたび」 2003年6月1日発行 より
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