凍てついた黒い大地は、わずかに残された体温をも容赦なく奪い去ってしまう。
「体温が28度以下になれば、人間は確実に死にます」
たき火の側で夜通し不寝番をしていたボランティアの青年が話してくれた。
数カ所にたかれているたき火を囲むようにして黒い地べたの上に人々が横たわっている。よくみると、青いビニールシートの上に薄いフトンが敷かれ、人々はその中にうずくまっていた。
昨年の大晦日の夜更であった。凍てついた地面からはい上がってくる鋭い冷気が、まるで研ぎすました刃物のように骨身につきささる。はたしてこの人々は睡眠がとれるのだろうか。だが、彼らは身じろぎもしないで横たわっていた。
「晴天の夜はまだましです。雨か雪になれば、これだけの人々(約300人位か)を泊める場所がないのです」と。
まだ、あどけなさが残るこの青年は顔を曇らせた。
「この広い世界の中に、不遇な人々を温かく迎え入れてくれる場所がない。心の支えとなるものがない。……まったく生きるすべはない。これが日本の現状なのです」
「人間としての希望がまるでないのです」
今も全国各地の寄せ場ではバブルの崩壊から、長く続くこの不況が、その日の生きる糧を求める人々に深刻な影響を与え続けているのである。
アブレ(失業)た人々はアオカン(野宿)を強制されている。その日暮らしの人々にとって、戦後最大級の、抜け道が見いだせないでいるこの大不況は、まさに悪夢である。
「アブレ地獄の最中、炊き出しに並ぶ人々の数は日増に増えてきます。雑炊の炊き出しにもかなり出費がかさみます。お米でも野菜でも、何でも、助けて下さい。
私たちが持参した衣類も食料品も、又お金も、この人々の切迫した必要の前にはあっという聞に消えてしまい、ほんのわずかなものでしかなかった。
根本的な、何か大切なものが、この人々のために欠落している。景気の変動によって真っ先に影響を受けるのが、社会的に何の保障も得られないでいる弱い立場の人々である。
先行きの生活や仕事のことに不安を持ちたくはない。これは人情である。にもかかわらず、現状はますますひどくなるばかりである。
寄せ場で聞いた心に残る言葉があった。それは、「今日の日本の繁栄は、俺たちのやってきた、きつい労働と尊い犠牲の上に成り立っているのだ」と。
しかし、善意の人々のこの声は為政者たちの心には届かない。それどころか、立場を悪用して汚職やワイロをやりたい放題やりとりし、この人々の善意を食いものにし、その結果をふみにじり、心に冷水をあびせかけている。
選良された人々よ。どうか心して、この言葉に耳を傾けていただきたい。
…又…、今、私たちにも求められている、人間としての大切なものとは何か? が鋭く問いかけられている。
そのためにも一人一人が無関心や怠惰から離れ、現実をよく見つめ、優れた知恵を寄せ合い、誰もが幸せを手に入れる事の可能な時代を創造していく。そのための真剣な対応が求められている。
しかし、この受難の時代こそ、新しき良き時代をリストラ、創造する絶好のチャンス到来の時であるのかもしれない。
祈り
「神よ、我らに優れた知恵、と愛をお与え下さい。その事によってよき時代を創造し、不義、不正を排除し、人々に幸せをもたらす力をお与え下さい」
アーメン
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