【軽率な判断をするな】
知恵があれば、身分の低い者でも頭角を現し、
高貴な人々と肩を並べることができる。
姿形が美しいからといって、人を褒めそやすな。
また、外見によって人を毛嫌いするな。
蜜蜂は、羽で飛ぶもののうち小さい方だが、
その作る蜜は、最高に甘い。
身につけている衣服を誇るな。
栄誉を受けるときでも、おごり高ぶるな。
主のなさることは、計り知れず、
その御業は、人々に隠されているからだ。
力を誇る多くの支配者が土下座するはめに陥り、
思いもよらぬ者が王冠をかぶることになった。
多くの権力者がひどい辱しめを受け、
高名な者たちが異国の人の手に渡された。
よく調べないうちに、とがめてはならない。
まず、じっくり考え、その後に叱れ。
よく聞かないうちに、答えてはならない。
他人の話に割り込むな。
自分にかかわりのない事で、人と争うな。
ならず者たちの言い争いに加わるな。
【多くの事に手を出すな】子よ、あまり多くの事に手をだすな。
何もかもしようとすれば、ひどい目に遭う。
やり遂げようとしても、果たすことはできず、
逃げようとしても、逃げきれるものではない。
苦労し、難儀し、懸命に事を運ぼうとしても、
その人はかえってますます遅れてしまうものだ。
のろまで、助けを必要とし、
何もできず、貧しさにあえいでいる人もいる。
しかし、主は、彼に目を注いで恵みを与え、
惨めな状態から引き上げ、
高めてくださった。
そこで、多くの人々は彼を見て非常に驚いた。
善と悪、生と死、
貧困と富は、主が与えるもの。
[知恵と悟り、それに律法の知識、
愛と善行の道、これらは、主が与えるもの。
迷いと闇とは、罪人と共に生じ、
悪は、それを誇る者と共にとどまる。]
主の賜物は、信仰深い人と共にあり、
主の御心は、常に彼らを成功に導いてくださる。
生活を切り詰め、強欲に富を蓄える人もいる。
だが、どんな報いがあると言うのか。
「これで安心だ。
自分の財産で食っていけるぞ」と言っても、
それがいつまで続くのか知るよしもなく、
財産を他人に残して、死んでいく。
契約をしっかり守り、それに心を向け、
自分の務めを果たしながら年老いていけ。
罪人が仕事に成功するのを見て、驚きねたむな。
主を信じて、お前の労働を続けよ。
貧しい人を、たちどころに金持ちにすることは、
主にとって、いともたやすいことなのだ。
主の祝福こそ、信仰深い人の受ける報いなのだ。
主は、幸せの花を、速やかに咲かせてくださる。
お前はこう言ってはならない。
「今の自分は何の役に立つのだろう。
今後役に立つとしたら、それは何だろう」と。
また、次のように言ってもならない。
「今の自分は満ち足りている。
今後どんな災害がふりかかるというのか」と。
人は、幸福なときには不幸を忘れ、
不幸なときには、幸福を思い出さない。
死に際して、生前の行状に応じて報いることは、
主にとって、いともたやすいことなのだ。
不幸に遭うと、すべての楽しみを忘れるが、
人の行いの評価は、その最期に明らかになる。
どんな人に対しても死を迎えるまでは、
その人のことを幸せだと言うな。
人間は、その子供たちによって、
本当の姿が知られるのだ。
【他人を家に入れるな】
だれかれかまわず家に招き入れるな。
悪賢い人間が、多くのたくらみをもって
うかがっているのだから。
高慢な人間の心は、
籠の中にいるおとりのうずらのようだ。
密偵のように、お前を陥れようと
すきをうかがっている。
彼は、善を曲げて悪に変えようとねらっており、
申し分のない行いにさえ、非難を浴びせる。
わずかな火種で、炭は燃え盛る。
罪人は、血を流そうとして、
はかりごとをめぐらしているのだ。
悪者に気をつけよ。
悪事をたくらんでいるのだから。
お前が傷つき、いつまでも苦しまないように。
他人を自分の家に同居させてみよ。
もめごとでお前は頭を悩まし、
身内の者からも疎まれる。
(シラ書11章1〜34節)
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