生命ふたたび(10)
─ある頸椎症患者の記録─
共感・往復メール
田中道孝・K子・あいかわ
ここに"弟"田中道孝君と弟子K子、そして私あいかわの間で取り交わされた手術前後のメールのやりとりを報告します。
〈兄貴へ〉
2003年3月17日(月) 田中道孝→あいかわ
先日のお手紙を拝見して大変心配しておりました。肝臓の状態まで配慮しなければならない兄貴の状態からすれば僕のほうはたいしたことないと思いますが、その手術はまったく私の場合と同じで、前方固定と言い、首の前から食道その他を掻き分けての手術です。確かに出血はほとんどありませんでした。
仰向けのままにベッドで頭部を両方から固定されて真上を見ることしか出来ずに、天井を見つめていると、天井の模様の中に幻覚が見えたことを思い出しました。しかし私の時と違い1週間で退院とあるのは驚きです。ちなみに私の場合退院まで4ヶ月を要しました。また固定方法もまったく違うようで医学の進歩を感じます。僕の足もなかなか改善しないので一度診察を受けてみたいと思った位です。いずれにしても大変な手術には違いなくご無事をお祈りしております。予定が決まりましたら教えてください。道孝
〈道孝様〉 3月25日(火) K子→道孝
おしょちへのお便り読ませて頂きました。
あの非情とも言える手術を受けておられたのですね。どれほどおつらかったかと… そしておしょちのことをどれほど心配なさったことかと思いました。
取り除いた椎間板の代わりになるものが開発されたことで、本当に多くの人々が助けられているのだと思わされました。これなしでの手術はおしょちには不可能です。道孝さんにも間に合ってほしかったですが。
長く患っているC型肝炎、肝硬変のことがあり、主治医はとても心配されましたが、おしょちが一目で信頼をおいた外科医と麻酔科医は自信をもっておられます。
その麻酔科の先生はGOT、GPTの数値がもっと悪く、血小板がもっと少ない患者も少なからず担当してこられ、手術執刀医は脳外科の先生で、脳の手術用の顕微鏡を使うため、肉眼による手術とは比べるべくもなく安全な手術をしておられます。
このお二人のコンビで、何人もの苦しんでいる方々を助けてこられた、経験豊富な深いお人柄の先生方です。このお二人に全幅の信頼を置き、全てを神様にお委ねしています。
現在おしょちが耐え続けている激痛は壮絶です。痛み止めは一切使っていませんし、わずかでも睡眠をとるために、処方された睡眠薬マイスリーを夜2分の1から1錠飲むのみです。
〈午後入院〉 4月8日(火)朝 K子→道孝
痛みは限界に来ていますが、ものすごい精神力でそれを越えてなお大きな思いの中に時を過ごしています。
「大丈夫だから安心して待っているように」とのおしょちから道孝さんへのメッセージをお届けします。今日午後入院します。
〈第二伸〉 同日午後 K子→道孝
無事入院しました。
明日もう一度CTスキャンをやって、あさって手術です。
「格段に進んだ手術方法で、その上兄貴が信頼を置いた医師の執刀なので、心配いらない。大した手術ではない。それより漁業界の再編にエネルギーをしっかり使うこと。」
おしょちから道孝さんへのメッセージです。安心して大切なお仕事に力を注いでください。
(つづく)
「生命ふたたび」 2003年6月1日発行 より
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